ハブアタックとその実効性に関する研究報告

土生直樹
HABU Naoki

九州工業大学大学院情報工学研究科
Graduate School of Computer Science and Systems Engineering, Kyushu Institute of Technology

あらまし:栄養ドリンクのハブアタックについて実験考察を行った。まず、容器から得られた情報を元にハブアタックを分析し、それがハブに満ちあふれていることが判明した。次いで、筆者の学部卒業諮問において飲んだときの効果を報告した。そこから、ハブアタックは非常に強力な飲料であって、服用時に空腹、睡眠不足、そして緊張などのいくつかが服用者に認められると、それらが相乗効果となってより強力な効き目を発揮することが確認された。
キーワード:ハブアタック、ハブ、朝鮮人参、玉泉ハブ公園、南都ワールド株式会社NC
  1. はじめに

    沖縄県原産の栄養ドリンクであるハブアタックについて報告する。ハブアタックは沖縄で土産として広く売られているもので、その効果を考察することは、研究における疲労や発表の緊張の中で日々を送る研究者にとっては重要な意味を持つ。本稿では、筆者が実際にハブアタックを入手、試飲したことによる経験から得られた、その特徴や実効性について述べる。

  2. ハブ

    ハブ(和名:ホンハブ、学名:Trimeresurus flavoviridis、クサリヘビ科マムシ亜科ハブ属)は、日本列島の南に位置する奄美諸島や沖縄諸島に生息する蛇で、体長は1.0m〜2.2mである。色彩変異が多く、地が黄色いものを金ハブ、褐色のものを銀ハブ、黒っぽいものを黒ハブという。主に山林地帯に生息するが、木にも登るので足元ばかりではなく、頭上からも噛みついてくる。また、草薮にも出没するので、ハブによる被害を防止する目的で雑草除去を条例で定める市町村も存在する[3] 。ハブは7〜8月に4〜15卵を生み、ほ乳類や鳥類を捕食する。

    ハブは世界の3大毒蛇の一種に挙げられる毒蛇で、毒自体は決して強くはないが、出す毒の量が多いために咬まれると成人でも死の危険が生じる。ハブの毒は出血毒で、咬まれると筋肉が破壊されるために激しい痛みを伴い、10分もすると受傷部位は皮下出血のため腫れ上がる。こうなったら早めに病院へ行くことをお勧めする。ただし、移入され野生化したハブ属の他の種との異種交配が起きており、そのようにして生まれたハブの雑種に対する血清は存在しないので注意されたし。

    ハブを捕食する動物には無毒蛇のアカマタが挙げられるが、これはあまりハブを食べないようである。他にはタカやフクロウが子供のハブを食べるが、大きくなったハブを食べようとする種はいないようである(というか誰が死の危険を冒してまで食べようか)。ハブの天敵として移入されたマングースはかつて観光名所のハブ村でハブ対マングースのショウでハブを倒していたが、これは空腹で気が荒くなったマングースを満腹で動きが鈍くなったハブにあてがっていただけとの説がある。マングースはネズミなどの小動物を好むので、野生化したそれらがヤンバルクイナ等の天然記念物を捕食する懸念がなされている。これはハブよりタチが悪い。ハブはよく車に轢かれて死んでいるらしいので、人間こそがハブの天敵といえよう。

    筆者の姓は土生(はぶ)であるが、蛇のハブとは関係ないはずである。

  3. ハブアタック

    この章ではハブアタックの空き瓶を観察して得られたことからハブアタックについて調べる。ハブアタックの瓶を正面からとった写真を図1に示す。 明らかなように、明朝体で「ハブアタック」と書いてある。特に「ハブ」が強調されているのが印象的である。また、金色に黒の背景模様に注目すると、これは口を大きく開けたハブそのものであることが分かる。全体的にハブの強烈さを前面に打ち出したデザインであるといえる。また、「琉球ハブエキス配合」という記述からは、ハブの何かしかが入っていることが容易に予想できる。

    ハブアタックの右背面を図2に示す。 これより玉泉ハブ公園が製品し、南都ワールド株式会社NCが販売を行っていることが分かる。なお、南都ワールドの住所と電話番号も「沖縄県那覇市牧志1-3-24、TEL098-869-1166」と読み取れる。内容量は50mlである。大正製薬のリポビタンDが100mlであるので、ハブアタックはそれの半分の内容量である。また、この写真には写っていないが、注意書きとして以下の一文が記述してあった。

    「●天然物を使用しているため沈殿が生じる場合がありますが、品質には問題ありません。」
    ここでいう天然物については、おおよその見当はつくだろう。
    図1:ハブアタック正面。強そうである。
    ハブアタック正面
    図2:ハブアタック右背面。業者の連絡先が記してある。
    右背面

    ハブアタックの左背面を図3に示す。「清涼飲料水」と自己主張はしているが、その清涼さを凌駕する沈殿物の正体が明らかになった。原材料名には真っ先に記述してある。

    「ハブ」
    この欄は内容量の多い順に列挙されるので、この飲料にはハブがたっぷり詰め込まれていることが明らかである。これを飲むことはまさにハブを煎じて飲むことに等しいと言えよう。また、ハブとだけ記述してあるので、おそらくハブの特定の部位を混ぜているのではなく、ハブをまるごとぶち込んでいることが推測できる。工場に運び込まれる大量のハブは、新鮮さを保つために生きたまま納入される。それをミキサーにかけて細切れにするか、あるいは日干しにしてひからびたハブの死体を粉末状にするかして飲料に混ぜているに違いない。ここまでされると、ハブの次に記述してある朝鮮人参がかすむというものである。韓国や朝鮮にはハブを入れつつもその存在を無視できる飲み心地がする朝鮮人参アタックを開発することが望まれる。

    最後に、上面を図4に示す。ここには隠れた自己主張が表記されることが多いので、観察の価値は大いにある。ハブアタックの場合は「不老長寿」であった。ハブを毎日煎じて飲んでいれば確かに長生きはできそうである。しかし、元気になりすぎて心臓を痛めないように服用に間隔をあけることがが望ましい。また、「不老長寿」の文字の記述順がわが国の古銭に似せてあるのがわかる。これは将来、ハブアタックを沖縄の統一通貨たらしめんとする考えが読みとれる。スーパーで野菜と交換される1ハブアタックや、カラオケボックスで支払われる10ハブアタック、また公職選挙における実弾攻撃に用いられる50万ハブアタックなど、応用は幅広い。

    図3:ハブアタック左背面。清涼飲料水である。
    左背面
    図4:ハブアタック上面。長生きできそうである。
    蓋

    ハブアタックに関する従来の報告をいくつか示す。宣伝文句として「いつもより2、3回イけます」「最近彼が・・・という人に」などを出している店が那覇の国際通りにある言われている[4]。ハブが強烈な毒を持っている反作用として、すばらしい栄養源でもあることを示唆しているのではないだろうか。また、内容物については薄オレンジ色をした普通の栄養ドリンクであるが、戦慄を禁じ得ないとの主張や[5]、獣臭く、強烈な爬虫類の抜け殻のような臭いがするとの情報がある[6]。なお、価格は最低で110円でもある[7]

  4. 実験

    筆者はハブアタックを学部の卒業研究諮問会の直前に自ら服用し、その効果を調べた、というよりは極度の緊張でハブアタックにすがったという方が正確であろう。筆者は発表前の3日間は平均して3時間の睡眠で、前夜は1時間のうたた寝をした。また食事の摂取状況は、前日の夕食にはほかほか弁当の唐揚げ弁当、夜食にはカロリーメイト1本、朝食にはインスタントのかゆとみそ汁を摂った。発表前に昼食は摂っていない。記述すべき心理状況として、発表当日の朝の段階で実験が失敗しており、そのため論文概要や論文、そして発表用スライドも完成していなかったため発表練習も不十分で、卒業が不可能となるかもしれないとの恐怖心に満たされていたことを挙げておく。

    筆者はハブアタックを発表当日12時半に服用して同40分に会場入り、50分には自研究室の発表が始まった。筆者の前に発表したふたりは教官の質問につまっており、筆者も失敗するのではと緊張していた。13時半、筆者の発表が開始した。タイトルをしゃべるところからつまずき、散々な発表の後、教官方からの質問があった。

    「結局、実験は失敗したんだよね?」
    「いいえ!、最初の数ステップは成功してい、ます。」

    「それがうまくいくという理論的確証はあるの?」
    「はい、今回決定したルールでやるとうまくいくはずです。」

    「(筆者はこの質問が聞き取れなかった)」
    「はぁ↑」

    ここで指導教官が質問の時間が終了したことを示す鐘を鳴らした。この後の教授会議で筆者の卒業諮問の結果がかろうじて合格となった。筆者が学部卒業できた、すなわち、教官方を相手にふてぶてしいともとれる態度を示すことができた要因のひとつにハブアタックがあったことは疑うまでもない。しかし、これは筆者の過度の睡眠不足と空腹、そして緊張がハブアタックの効果をねじれの方向へ増幅させたことによる可能性もある。そもそも、卒業できたのは指導教官の情けに依るところが大きいであろう。このことを忘れるのはひとでなしである。

    なお、肝心のハブアタックを飲んだ感想は、極度の緊張という環境で飲んだので、朝鮮人参の香り以外覚えていない。

  5. まとめ

    本稿では、ハブアタックとハブアタックについて、容器の外観と、筆者が実際に飲んだことによって得られた情報を元に様々な考察を行った。しかし、今回の実験ではハブアタックの効果を明らかにするには不十分である。今後の課題としては、より解像度がよく、より焦点があわせやすいデジタルカメラによって画像をアップすることが挙げられる。


謝辞
ハブアタックを提供してくださった古賀美雪氏、田尻亜紀子氏を初め沖縄旅行団の方々に心より感謝する。
本稿は沖縄旅行団の方々からのハブアタック差し入れに対する結果報告のために作成された。
参考文献
[1]ハブの館(http://www.cosmos.ne.jp/~tera/index.html)
[2]日本の蛇(ヘビ)snakes(http://village.infoweb.ne.jp/~fwic4591/snake/japhebi.htm)
[3]浦添市ハブによる被害の防止及びあき地の雑草等の除去に関する条例(http://jorei.cne.jp/Okinawa/havu_jorei.html)、動物の法律・条例集
[4]那覇 国際通り(http://park1.wakwak.com/~goinkyo/iyagemono/iyage003.html)、柴崎御隠居倶楽部
[5]沖縄のまずいジュース(http://www.geocities.co.jp/Technopolis/8902/ph_mjp.htm)、ミッション・あうらスペース
[6]風雲急を告げる北限(http://www.asahi-net.or.jp/~sf8h-ssk/tc01_10_15_02.htm)、あおのしましま
[7]食品catalog2(http://www5d.biglobe.ne.jp/~yuimarl/syokuhin2.html)沖縄ショップ ゆいまーる

have@club.kyutech.ac.jp
Sun Sep 8 21:19:12 JST 2002
Updated: Mon Dec 14 02:04:00 JST 2003

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